微分の定義と定義域について
質問者①
定義域がある場合、その定義域の端では微分できないのですか?
それはその端において、右側極限と左側極限の片方しかもとめることができず、微分可能性がいえないからですか?増減表を書くときに、y’の欄に空欄があったりして、困っています。
回答①
そのとおりです。
定義がf(x)'=lim[h→0](f(x+h)-f(x))/hなので、極限操作はh→0で、つまりh→+0とh→-0の両方で行える必要があります。端っこは、どちらかが定義されておらず、極限操作もできないので、微分も定義できません。
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次の回答では、更に詳しく議論されています。
質問者②
y=f(x) 定義域は a≦x≦b。
このとき、定義域の端点では、微分可能性は保証されない。
故に、y=f'(x)の定義域は(a<x<b)つまり、開区間であることが必要である。
これは正しいですか?
回答②
「決め」の問題ですね。
たしか高校数学の場合は端点では微分を「考えません」
(明確に”微分不可能”と教えていたかどうか、ちょっと定かではありませんが)
したがって考える導関数の定義域は常に開区間です。
***以下余談***
ただ微分を考えないからと言って、別に微分不可能というわけではなく、
大学では微分の定義によって「微分不可能」だったり「可能」だったりします。
「x=pにおいて右側微分(※)と左側微分が存在し、両者が等しいときf(x)はx=pで微分可能」・・・(A)
という法則が存在しますが、これにこだわれば端点では片側微分しか存在しませんから、「微分不可能」と言えます。
これはpが内点(端点ではない点)である場合の話であり、一般的な微分の定義では、端点pにおいて(A)は成り立ちません。
というのも微分可能かどうかはあくまで極限値
lim[h→0](f(p+h)-f(p))/h(ここでhの動く範囲は関数fの定義域内)・・・(B)
が存在するかどうかの話なので、定義通り計算すれば、端点だろうと微分係数は普通に計算できます。
したがって「微分可能」です。
(※)微分の定義(B)において、hを動かす範囲をp<hとしたのが右側微分。逆が左側微分。
端点bではb<hなる点が存在しませんので、右側微分が存在しません。
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質問者③
高校の教科書を要約すると、微分は定義域を開区間で考え、連続は定義域を閉区間で考えるとあります。微分も、閉区間で考えると何か不都合になることがあるのですか。
もし、あるとするなら具体例で教えてください。
補足
wさんの回答にあるように
y=√(1-x^2)は-1≦x≦1で連続で,-1<x<1で微分可能。-1≦x≦1では微分可能とはいえないけど,こういう場合でも平均値の定理は使える。
とありますが、平均値の定理にあてはめるためにしているのですか。平均値の定理を適用させる以外で何か不都合なことがありますか。
回答③
今の高校でどう教えているか知りませんが, 大学以上では開か閉に関係なく, 区間で連続を考えます. 連続の場合は, 端の状態も重要です. 端点だけ不連続という関数もあります.
微分係数の定義として
h→+0 つまり h>0から近づくとき {f(a+h)-f(a)}/h が収束するときの極限値を"右微分係数"とよびます.
h→-0 つまり h<0から近づくとき {f(a+h)-f(a)}/h が収束するときの極限値を"左微分係数"とよびます.
"左微分係数"と"右微分係数"が一致したときに関数f(x)はx=aで微分可能であるといい, "左微分係数"="右微分係数"の値を"微分係数"とします. 左と右が一致しない例はy=|x|のx=0のときです.
閉区間の端の点では, 収束したとしても"右微分係数"か"左微分係数"かのどちらかしか存在しません. そして, 私の持っている大学の教科書(むかしの本)では, 端点の"右微分係数"か"左微分係数"かのどちらか一方しか存在しない場合でも, その点で微分可能としています. 〔ただ, 最近ではどういう扱いなのかは知りません. 数学の定義は時代と共に見直されています.〕
しかし, 区間として微分可能というときにはその区間の内部に限定して考えることが普通です. 内部というのは端点を除外した区間で, 開集合です. 微分の目的は曲線の滑らかさとか, 関数の増減を調べることが目的です. そういう観点からすると端の点がどうなっていてもあまり意味は無いと思います. 端点は連続か不連続かだけの判定でよい. 言いかえると, 端点を含んだ閉区間で微分を考えても特に不都合は無いと思います.
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質問者④
導関数の定義域についての質問です
例えば、すべての実数xで微分可能な関数f(x)において、x≧aとするとき、f'(x)の定義域はx≧aですか?それともx>aですか?
導関数の定義域はいつも開区間になっているような気がするんですが、その理由がいまいち理解していません。もとの関数では定義域に入っているが導関数では定義域に入っていないのは、導関数において分母を0にする数だから、絶対値記号の場合分けの分かれ目だから、という理由で合ってますか?
もし合ってるとしたら、はじめに質問したf'(x)の定義域はx≧aとなりますよね?
とても気になっています。
よろしくお願いします。
回答④
高校の教わり方だと、左極限・右極限が強調され過ぎているようです。
微分係数の定義 f'(x) = lim[t→x] { f(t) - f(x) } / (t - x) において、
lim[t→x] は、t が『任意の近づき方で』 x へ近づくときを考えています。
左からとか、右からばかりでなく、x を跨いで左右に飛び回りながら
近づいたってよいのです。どのような近づき方をしても、
{ f(t) - f(x) } / (t - x) が共通の値へ近づいていくとき、極限が
『収束する』と定義されているのですから。
左極限と右極限が両方存在して、その値が一致するとき、極限が収束する
というのは、実開区間を定義域とする関数の重要な性質ですが、
そればかりに囚われてしまうと、定義域が開区間ではない関数の収束性が
見えてきません。閉区間で定義された関数の微分係数などは、その好例です。
lim[t→x] は、t が定義域内を任意の近づき方で x へ近づけばよいのですから、
f(x) が x≧a で定義されているならば、f'(a) は、右極限だけを考えれば
よいのです。
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ここからは少し違った話です。
「微分可能なら連続」の証明について、です。参考までに。
関数 f(x)f(x) が x=a で微分可能なら x=a で連続。
直感的には「グラフが滑らかならつながっている」という意味です。
定理
ある区間M で定義された関数f(x)が微分可能ならば,この区間でf(x)は連続である
証明:
関数f(x)が点a∈Mで微分可能ならば,適当な定数A が存在して,
h → 0 ⇒ f(a+h)-f(a) = Ah + o(h)
したがって,
h → 0 ⇒ f(a+h)-f(a) → 0
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微分係数の別の表現として,
微分係数Aの定義 :
適当な定数A が存在して, h→0 ⇒ f(a+h)-f(a)=Ah + o(h)
と書ける。
といった表現も使われます。o(h)は h より高位の無限小である任意のh の関数です。